ドローダウン

ドローダウン

ドローダウンとは?地球温暖化を逆転させる取り組みと私たちが出来ること

「温暖化対策って結局、個人には何ができるの?」と感じることがありますよね。

温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの普及といったニュースを目にしても、どこか遠い話のように思ってしまうことが誰しもあるはずです。

でも実は、私たちの日常にこそ、地球環境を救うヒントが隠れています。

その鍵を握るのが「ドローダウン」という考え方です。

ドローダウンとは温暖化を「止める」だけではなく、地球を回復させるための具体的なステップを示した取り組みのことです。

さて、そのドローダウンとは具体的に、どういった内容なのか、そして私たち一人ひとりが何をすればいいのかを知れば、未来に向けた一歩が見えてくるはずです。

この記事では、ドローダウンの概要や取り組みの詳細、そして私たちが今すぐ始められるアクションについて詳しく解説しています。



私たちの未来を決めるドローダウンって、何?

「ドローダウン」とは、地球温暖化の文脈において、大気中の温室効果ガス濃度がピークを迎え、その後減少に転じる転換点とその概念を指します。

たとえば、お風呂の水位を考えてみましょう。

蛇口から水が入ってくる速度が排水口から出ていく速度より速ければ、水位は上がり続けます。

これが現在の地球の状態です。温室効果ガスの排出量が、自然が吸収できる量を大きく上回っているのです。

ドローダウンは、この状況を逆転させる転換点を意味します。

つまり、温室効果ガスの「排出量」を「吸収量」が上回るようになり、大気中の温室効果ガス濃度が徐々に減少していく状態を指します。

しかし、この転換点に到達するには、2つのアプローチが必要です。

1つは温室効果ガスの排出を減らすこと。もう1つは、すでに大気中にある温室効果ガスを積極的に除去・吸収することです。

森林の保護や土壌の改善といった自然の力を活用した方法から、最新技術を用いた直接的な大気からの二酸化炭素除去まで、様々な手段が検討されています。

ドローダウンの概念は、単なる「排出削減」を超えて、積極的に地球環境を回復させていく転換点を示す、未来のためのプロジェクトです。

 

温暖化対策としてのドローダウンは、なぜ生まれた?

この「ドローダウン」という概念と取り組みは、アメリカの環境活動家であり起業家のポール・ホーケン氏が2017年に提唱し、『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』という著書で世界に広めました。

 

なぜこの概念が重要視されているのでしょうか?

 

これまでの温暖化対策は、主に「これ以上悪化させない」という予防的な姿勢が中心でした。

 

しかし、ドローダウンは、積極的に大気中の温室効果ガスを減らし、地球環境を健全な状態に「回復」させることを目指しています。

 

つまり、森林再生や土壌改善などを通じて、自然本来の力を最大限に活用し、すでに排出された温室効果ガスまでも除去しようという、より積極的な環境再生のアプローチを提示したのです。

 

さらに、この取り組みが経済発展や社会の持続可能性とも両立できることを示した点で、ドローダウンという考え方は画期的でした。

 

国際連合環境計画(UNEP)は、このアプローチを支持し、再生可能エネルギーの推進や森林再生に関するプログラムを積極的に展開しています。

 

世界銀行も、持続可能な農業や都市開発プロジェクトを通じて、ドローダウンの考え方に沿った温室効果ガスの削減を支援しています。

 

日本でも、ドローダウン・ジャパン・コンソーシアムが設立され、この考え方を広める活動が始まっています。

 

政府も再生可能エネルギーの普及や森林保全プロジェクトに予算を割り当てるなど、間接的にドローダウンの目標達成を後押ししています。




プロジェクト・ドローダウンが達成できなかった場合は、どうなってしまうの?

  • 異常気象の激化: 気温上昇が続き、洪水、干ばつ、台風などの異常気象が頻発し、数千億ドル規模の経済損失が予測されます (Hoegh-Guldberg et al., 2019)。
  • 海面上昇による被害: 海面上昇が進み、世界の1億5千万人以上が移住を余儀なくされる可能性があります (Mcmichael et al., 2006)
  • 生態系の崩壊: 生物多様性が大幅に減少し、森林面積は毎年1,300万ヘクタール失われると予測されています (Bhatt, 2023)
  • 健康被害の拡大: 熱波や感染症が増加し、特に発展途上国で数百万人の健康が脅かされます (Kjellstrom et al., 2010)
  • 経済的損失の増大: 農業や漁業の生産性低下により、世界経済は年間数兆ドル規模の損失を被る可能性があります (Tol, 2009)

 

プロジェクト・ドローダウンが達成できなかった場合、私たちの地球と社会は深刻なリスクに直面することになります。

まず、気候変動による異常気象がさらに激化することが予測されています。

洪水、干ばつ、台風などの自然災害が頻発し、その経済的損失は数千億ドル規模に達すると見込まれています。

このまま対策が進まなければ、世界で1億5千万人以上が住む場所を失い、気候難民となる可能性があります。

特に日本を含む、沿岸都市や小島嶼国では、多くの人々が移住を余儀なくされるでしょう。

そして、気候変動における生態系への影響も計り知れません。

研究によると、森林面積は毎年1,300万ヘクタールものペースで失われ続けると予測されています。

これは、日本の国土面積の約3分の1に相当する規模です。この生物多様性の損失は、人類の食料供給にも重大な影響を及ぼすことになります。

また、熱波の増加や感染症の拡大により、特に発展途上国では数百万人の健康が脅かされる可能性があります。

さらに、農業や漁業の生産性低下により、世界経済は年間数兆ドル規模の損失を被ると予測されています。

これらの予測は、私たちが今すぐに行動を起こさなければ、取り返しのつかない事態に陥る可能性があることを警告しているのです。

出典論文一覧



温暖化によって日本が受ける申告なリスク

プロジェクト・ドローダウンが達成できなかった場合、世界中のみならず、日本も深刻なリスクに直面することになります。

特に大きな影響を受けるのが海面上昇の問題です。

気象庁の予測によると、このまま温室効果ガスの排出が続く「4℃上昇シナリオ」の場合、21世紀末までに日本の沿岸部の海面水位は平均で0.71メートル(最大で約1メートル)上昇すると予測されています。

この海面上昇は、単独でも大きな脅威ですが、さらに高潮や高波の影響と組み合わさることで、沿岸部の災害リスクを著しく高めることになります。

例えば、台風による高潮の影響がより深刻化し、特に東京湾や大阪湾などの三大湾沿岸部では、これまで以上の浸水被害が起きることが予測されています。

日本の沿岸地域に位置する大都市部でも多くの人々が移住を余儀なくされる可能性があり、日本の人口の約4割が沿岸部の低地に集中していることを考えると、その影響は甚大なものになることでしょう。

また、海面上昇は単なる浸水の問題だけでなく、地下水への塩水侵入による農業への影響や、沿岸のインフラ設備の損傷など、複合的な被害をもたらすことが懸念されています。

出典:海面水位・高潮・高波の観測事実と将来予測~「日本の気候変動2020」から~



プロジェクトドローダウンは、どんなことをするの?代表的な取り組みについて

 

分野

取り組み

概要

エネルギー

再生可能エネルギーの推進

太陽光や風力発電を中心に化石燃料依存を減らす。

食料

食品廃棄の削減

食品廃棄物を減らすことで、温室効果ガスの排出を抑える。

女性と女児

女性の教育機会の向上

女性の教育と家族計画の支援を通じて、人口増加の抑制と持続可能性を高める。

土地利用

森林再生と保全

森林の回復や保護を通じて、炭素吸収力を向上させる。

輸送

電気自動車の普及

化石燃料車の代替として電気自動車を広める。

 

温暖化対策というと、どこか遠い世界の話のように感じてしまう人も多いのではないでしょうか。

 

しかし、プロジェクト・ドローダウンが提案する対策は、実は私たちの暮らしに密接に関連した、とても現実的なものなのです。

 

例えば、エネルギー分野での取り組みを見てみましょう。

太陽光や風力発電の導入は、もはや環境保護だけの話ではありません。

世界の多くの地域で、再生可能エネルギーの発電コストは従来の化石燃料よりも安価になってきています。

 

つまり、環境にも家計にもやさしい、一石二鳥の解決策なのです。

 

また食料分野での取り組みも重要です。

 

世界で年間約13億トンの食品が廃棄されていると言われていますが、この削減だけでも大きな温室効果ガスの減少が期待できます。

 

また、植物性食品を中心とした食生活への転換も、健康と環境の両面でメリットをもたらす重要な対策として挙げられています。



意外な温暖化対策の切り札となる「女性と女児への教育」

 

温暖化対策というと、再生可能エネルギーや電気自動車など、テクノロジーの話題が中心になりがちです。でも、実は意外なところに大きな可能性が秘められているんです。

 

プロジェクト・ドローダウンの研究チームが打ち出した驚きの提案、それが「女性と女児への教育」でした。一見すると意外な組み合わせに思えるかもしれません。

 

しかし、その効果は絶大で、なんと2050年までに約69ギガトンものCO2削減が見込まれるされています。

 

それでは、なぜ、どうして女性と女児への教育が温暖化対策になるのか?

 

実は、教育を受けた女性には、いくつかの興味深い特徴があることが数多くの研究によって分かっています。

 

例えば、環境に優しい商品を選んだり、食品廃棄を減らしたり……日々の暮らしの中で、より環境に配慮した選択をする傾向があるのです。

 

「教育は未来への投資」とよく言われますが、それは地球環境の未来への投資でもあるのかもしれません。

 

小さな学びの一歩が、大きな地球規模の変化につながっていく――そんな希望が、このプロジェクトには詰まっているのです。

 

出典: Family Planning and Education




地球の肺、森林が救う私たちの未来

 

私たちにとって、「森林」という身近な存在が、地球の未来を救う鍵を握っているって、ご存知でしたか?

森林は、地球の「肺」とも呼ばれています。

その理由は、毎年約20億トンもの二酸化炭素(CO2)を吸収し、大気を浄化しているからです。

しかし、森林の役割はそれだけにとどまりません。

森林は多種多様な生物の住処として、生態系のバランスを保ち、私たちが生きるために必要な水や空気を供給する重要な存在でもあるのです。

過去には1分間にサッカー場10面分の森林が失われ続けていましたが、現在はブラジルやコロンビアでは環境重視の政策が進み、森林破壊のスピードを劇的に減少させることに成功しました。

2024年現在の森林破壊のスピードがブラジルでは36%、コロンビアではほぼ半減という成果を挙げています。

さらに、国連食糧農業機関(FAO)や日本の環境省も森林保全のための政策を強化しています。

日本では、新たに策定された「全国森林計画」により、適切な伐採や再植林の推進、違法伐採の対策が進められています。

このような国際的な取り組みが、森林破壊を防ぐ有効な手段となっています。

また私たち個人で出来る森林を守る取り組みとして、保護政策や植林活動だけでなく、私たち一人ひとりが持続可能な製品を選ぶなど、小さな行動が森林を守る大きな力となるでしょう。

 

出典:Amid a deforestation crisis, two countries plant seeds of hope

 

まとめ

 

このように、プロジェクト・ドローダウンの対策は、私たちの日常生活のあらゆる場面に関わっている取り組みなのです。

 

大切なのは、これらの取り組みが決して特別なものではなく、誰もが始められる身近なアクションだということです。まずは自分にできることから、一歩を踏み出してみませんか?

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